最近、仕事の関係もあって、20代前後の若者と会話する機会が増えました。
もう少ししたら、就職する世代です。
一部の学生しか見ていないのですが、世の中に対する視野が狭い学生は多いと私は感じています。
自分のやりたい仕事、世の中に存在する仕事、世の中にある会社。
自分に関することなのに、興味の範囲をなかなか広げようとしないように私の目には映るのです。
自分が学生の頃のことは、横に置いて言っているのですが・・・
さて、そんなことを考えている時に、以前読んだ1冊の本のことを思い出しました。
次のように紹介されています。
この複雑な世界を生き抜くための、鮮明なる指針。
心理学、行動経済学、哲学、投資家や起業家の思想をひもとき、スイスのベストセラー作家が渾身の力でまとめ上げた、未来が変わる「52の考え方」。
「考えるよりも行動しよう」など52の考え方が、これでもかというぐらい並べられています。
私が大いに同意できること、あまり賛同できないものもありましたが、生きていく上で大切ないくつもの視点を得ることが出来たように思います。
私が、学生を見て思い出したのは、その本にあった次の内容でした。
「サンプル数が少なすぎると、最適なものを見いだせない。」
・私たちが抽出するサンプル数は少なすぎて全体を代表していない。
・にもかかわらず、それだけの情報をもとに性急に決断を下してしまう。
・世界は私たちが思っているよりもずっと広く、ずっと多彩で、いろんなものを含んでいる。
・出来るだけサンプルを多く試すべき。
・大人になってからの最初の数年間で重要なのは、お金を稼ぐことでもキャリアを積むことでもない。
・人生の全体図を把握することである。
・あなたの人生を向上させたいのなら、せわしなく動き回るのを控え、何事も落ち着いて長期的に取り組むことである。
私からすると、若者は、自分がこれまでに知りうることができた限られた情報を全体として認識し、疑問を持つことなく、その中から即座に選択しているように見えるのです。
就職企業人気ランキングなどでも、上位に挙がるのは、TVや新聞などでPRされる一般的に知られているB to Cの大企業ばかりです。
もちろん本人の意識が最も重要ですが、彼らのそばにいる大人が、もっと彼らが若いころに、有益な情報を提供したり、適切な環境を用意することを意識しなければならないと、私は考えています。
さて、前号で紹介した 「なぜ僕らは働くのか」 監修池上彰 ですが、これに付随して、漫画で描かれていたエピソードを紹介します。
不登校を経験した中学生の主人公は、自分が将来何をしたいのかよくわからないことに不安を感じています。
一方、自分は子供が好きだから保育士になりたいと将来の夢を語る幼馴染みの同級生に対して、主人公はそれに比べて自分は全然ダメだと落胆してしまうのです。
その話を主人公が同居している叔母に伝えたところ、叔母からこう諭されるのです。
「他の人はもう将来を考えて前に進んでいる、しかし自分はやりたいことがまだ見つからないからといって嘆く必要など全くない。
ひとつの見方として、中学生の今、なりたい職業が決まっていることが本当に彼女にとって良い事かどうかわからない。
彼女は、子供が好きという気持ちを軸に、今知っている職業の中で選択しているだけにすぎない。
これからの生活の中で、自分の好きなものや得意なことに偶然気付くことだってある。
また、これから出会うことになるいろんな人との関係によって、やりたいことが見つかるかもしれない。
だから、“自分は何がしたいのか”をしっかり考えて、これから生きていくことが大切である」と。
最後に、「Think Clearly」では、今を精一杯生きることの大切さを説いたシンプルで深い言葉がいくつもありましたので、それをご紹介します。
・天職を求めようとしない。
・天の声でなく、心の声に耳を傾ける。
・自分をGoogle検索したり、誰かの承認を求めたりするのはやめよう。
・それよりも、自分で何かを成し遂げたり、胸を張れるような生き方をしたりすることに注力した方が良い。
・まず、長期的な視点で計画を立て、出来上がったら、今だけに完全に意識を集中させる。
・未来の思い出に意識を向けるより、現在の経験を存分に楽しむ。
・夕日の写真を撮るより、夕日そのものを楽しもう。
周りの成功体験やノウハウばかりに目がいきがちな情報過多の時代だからこそ、自分の心に耳を傾ける。
そうした意識が持てるよう周囲の環境を自ら整えていくことが、VUCA時代を生き抜く鍵となるのでは、そのように感じた次第です。
※VUCA
V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)
C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)