先週の日曜日、5年ぶりに運転免許の更新に行ってきました。
この運転免許試験場では、毎日たくさんの人が訪れ、決められた時間までに手続きを完了させなければならないことから、スムーズに流れるよう運用面でいろんな工夫がなされていると改めて感じました。
掲示板の張り出し方、案内職員の配置、誘導するための掛け声など、何回も繰り返して、改善を重ねた結果、今のような形になっているのではと思ったからです。
こうした事は、運用面だけでなく、人そのものにも当てはまるというのが、本日のお話です。
このブログを始める前までは、運転免許の更新に来ても、そんなことを少しも気にした事、考えた事がありませんでしたが・・・
さて、恥ずかしながら、これまでのゴールド免許から一転、2回の速度超過で反則キップを切られていましたので、2時間の講習を受けなくてはいけませんでした。
以前はすぐ終了したのになんとも口惜しい。
午後からの参加ということで、その教室に集まったのは、全員で20人弱でした。
免許を取得して初めての更新者が半分。
残り半分が軽微な違反者でした。
何年か前に受講した時には、実際の事故映像などを見せられました。
今回も恐怖を演出して安全運転意識を高めようとするのではないかと想像していました。
定刻になり、中年のいかにもベテランの雰囲気を醸した講師の方が現れました。
その風貌、語り口調などから、講師としてかなりの回数をこなされている、また自動車運転に関わることについていろんな経験をされてる方ではないかと感じました。
すると冒頭に、これまで延べ20万人以上の講習を担当したと言われました。
納得です。
さて、どのような進行をされるのか、少し楽しみになってきました。
この方に会うまでは、道路交通法の改正などの要点と事故映像のビデオ視聴がほとんどだろうと思っていたからです。
そして想像していたとおり、この方が素晴らしい講師だと思ったことを次に述べます。
◎まず、何事も初めにきちんと説明をされるところです。
・最初にこの講習の目的、やることの意義
・受講中にやってはいけないことは何か
・やってしまうと免許が更新できないことがある、それはどんなことか
最初に目的を全員に伝えることによって、2時間の講義を終えた時に、受講生にどうなっていて欲しいのかをきちんと明示されるのです。
◎次に、飽きさせない工夫がちりばめられている点です。
・受講生にきちんと目を見て問い掛けをされること
・事故発生や死亡件数などの統計資料を用いて、他府県との比較をして特徴を際立たせること
・実際に講習中で起きたハプニングエピソードをユーモラスに紹介されること
これは、居眠り防止につながるのです。
居眠り防止について、思い出した事があります。
何年か前に受講した運転免許の更新講習で説明された講師の話です。
「皆さん、眠くなる人がいるかもしれません。」
「でも、それは人として仕方のない事です。」
「ですから、我慢できない方はわからないようにこっそり寝てください。」
これはなかなか衝撃発言で、かえって寝る方は減ったような気がしたものです。
さて、話を戻します。
◎最後に、いろんな配慮があることです。
「トイレがどうしてもがまんできなくなったら、躊躇せず手を挙げて用を足しに行ってください。」
「2時間で休憩は10分間の1回だけ。だから後半戦が短くなるように、前半を長めの時間に設定します。」
「貴重品の管理をしっかりとしてください。以前休憩中に財布の紛失が起こり、警察の捜索があったので。」
これらを読まれて、「たったこれだけ!?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これだけのことを毎回実践できている講師はこの世の中でどれくらいいるのでしょうか。
最近、私は仕事の関係で研修会や説明会で演台に立たれた方からお話を伺う機会が続きました。
・個人情報保護研修
・消費税増税対応講習会
・4月から始まる働き方改革関連法案に関する労基署による説明会
・環境局からの廃棄物管理責任者講習会
規模の大小はあれど、これらの方々の話とは圧倒的な差があったと感じざるを得ませんでした。
もちろん500人規模と10人規模の講習会を単純に比較することは、多少無理があるのかもしれません。
ただ、上記の4つに共通するのは、「自分の言いたいことを言うだけ」しかないのです。
人の前に出て自分の話を聴いてもらうために、どうするのが一番いいかを考えている方はほとんどいなかったと思います。
役人の方は、通り一遍の挨拶をしてからは、下を向いて原稿をひたすら読み続けるだけです。
聴衆の様子を窺うことなんて1度もしない方もおられます。
やはり何度も何度も試行錯誤しながら繰り返し実践していると、知識と行動が融合し、人そのものが熟成されると思うのです。
この免許更新の講師から見習うところはいくつもあったと思います。
自分も人前で話す機会があれば、この講師のことを思い出して、独りよがりの語りにならないよう心掛けたいと思いました。