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第96号 営業で成果を上げる人の意識の持ち方とは

 

先日、主に医療系のシステム販売をしておられる営業職の方と会食する機会がありました。

その方の仕事の取り組み方に共感できるところがありましたので、私が感じたことも含めてご紹介したいと思います。

主に中小規模の病院やクリニックに対して自社で開発した医療系のシステム販売を10年以上しておられる方です。

その方が入社して数年間は、会社の都合などで上司がコロコロ変わる不安定な部署での勤務が続いたそうです。

また、入社してすぐにチームを組んだ先輩がおおらかな性格だった、もっといえば、放任主義者であったため、不安定な中でも、その方にとっては、それなりに楽しく仕事を続けられたのだといわれます。

同業でもある前職での知識や経験がある中途入社者であったことから、前職のコネクションも活かしながら、徐々に営業成績を上げていかれました。

ある時、会社の利益に大きく貢献したと認められ、当時の取締役営業本部長から一席設けてもらったことがあったといいます。

また、会社が積極的に推奨販売していた商品が、一時期ある協会の助成金対象商品になっていました。

彼は、その商品の売上成績が非常に優秀であったため、社内で唯一の個人表彰者になったとか。

確かに口は非常に達者で、まさに営業マンという雰囲気。

話し口調は丁寧ではないけれども、親近感を感じます。

「どうして彼は頭角を現すことができたのだろうか。」

そんな事を思い浮かべながら、彼にいくつか質問しました。

 

「取引先の方とよく飲みにいかれるのですか?」

「いや、自分から誘うことはないんで、取引先とはほとんど行くことはないです。」

私はもちろん仕事はきっちりするけれども、仕事を離れたところで実務担当レベルで親睦を深めたりされているのかなと少し思っていたのです。

「それよりも、社内の関係者と良く行くんですよ。」

「システム系の営業は1人では成立しないんでね。」

「特に開発、導入、サポートが協力してくれるからこそ営業が成り立つんですよ。」

自社のシステムを販売するということは、その製品を作る部隊が別にいるわけです。

各顧客からの多種多様の要望がある中で、開発メンバーに「ここは、こういう仕様にして欲しい。」などといったお願いをする機会が多々あるのです。

また、システムを販売した後は、当然ながらそれを使えるようにする導入部隊もいます。

多くの場合、顧客から保守料をいただき、ハードの修理・メンテナンス、ソフトウェアの更新、法改正の対応などをサポートする部隊も必要です。

購入側にとって、商品を買うとは、使えるようにしてもらい、使い続けられるようにしてもらうことと同義です。

提供側からすると売って終わりではないのです。

それには、当然各種マスタ項目の設定やこれまでのシステムで使用していた個別のデータをコンバートする作業等も含んでいます。

彼が自分一人で仕事をしているのではないと言った意味はここにあります。

営業で成果を上げたいのなら、商品を売るために意識を外に向けてばかりではいけない。

社内の関係者に多少の無理を言っても動いてもらえる環境を営業マン自らが構築していかないといけない。

それが、一緒に飲みに行くことであってもいい。

彼の場合、それだけでなく、勤務後社内の仲間とランニングをしたり、またチームを組んで、休日にマラソン大会に参加したりしているのです。

仕事中のたわいもない雑談も意識してしやると、お互い困った時にお願いなどをしやすくなると言われました。

自分も楽しみながら、仲間と交流を図り、仕事の成果につなげる。

言葉で言うのは簡単ですが、実際それを自ら働き掛けて継続していくことは簡単ではありません。

職場の人間関係が希薄になってきた現代ではなおさらです。

頭ではわかっていても、その重要性をきちんと認識し、行動に結びつける。

外ばかりに目を向けてばかりいると、社内で仲間だと思っていた人が、実は足を引っ張る敵になっていたなんて、冗談にもならないことが起こる可能性もあるのです。

人がなかなかしたがらない面倒臭いことも、楽しみながら続けられる意志の力がそこにあると思います。

自分にはなかなか真似出来ないことだけれども、組織の中で活躍したいのであれば、こうした意識を持って仕事をすることは大切なことであると感じたのです。