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第95号 「なぜ50歳で人生のどん底を迎えるのか」を本田健さんから学ぶ

 

少し前ですが、ビジネス雑誌「PRESIDENT」の中に、「なぜ50歳で人生のどん底を迎えるのか」という本田健さんの定期コラムを見付けました。

 

この内容についてご紹介するとともに、私の思うところも併せてお伝えします。

 

全米経済研究所が51か国130万人を対象とした大規模な「人生満足度調査」を実施したところ、50歳前後が一番人生のどん底だったという結果が出たといいます。

 

なぜ、50歳前後なのでしょうか。

 

心理学でよく耳にすることがある「ミッドライフ・クライシス」という言葉。

 

日本語では「中年の危機」。

 

加齢とともに、目に見えて体力、記憶力、集中力などの低下が明らかになると、急に自分に自信が持てなくなり、大きな不安を感じてしまうのです。

 

また、「空の巣症候群」と呼ばれる女性特有の抑うつ症状。

 

子育てに一生懸命だった母親が、子供が巣立った後、心にぽっかり穴が開いてしまったような感覚になり、生きがいを失ってしまう状態です。

 

この2つの言葉で考えさせられることはいくつかあります。

 

確かに人生の後半に入ると、今まで全く気にならなかったことを感じるようになります。

 

・一度風邪をひくと、特に喉の完治に時間がかかるなどして、なかなか治らない

 

・ちょっとした擦り傷が治らない

 

・つい先日のことが思い出せない

 

・人の名前がなかなか出てこない

 

「果たしてこのままで大丈夫なのだろうか。」

 

これは私の実感ですし、理解していただける方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

また、「空の巣症候群」に関しては、私はこんな別の心配をしてしまいます。

 

子供が全員巣立ってしまったら、嫁とどんな会話をして、どんな生活になるのだろうか。

 

「子は鎹(かすがい)」とは、よくいったもので、子供がいるから夫婦の会話が促されるという側面があると思います。

 

昨年受講したセミナーの講師が、こんなことを言っておられました。

 

「夫婦であり続けるなら、来たるべき時までに、夫婦関係の再構築をしなければならない。」

 

価値観の違う者同士、年を重ねるにつれて、その違いがはっきりしてくる。

 

一緒にできること、できないこと、助け合えるところ、相容れないところを今一度考えなければならないと。

 

さて、こうした「人生のどん底」と感じてしまうひとつの大きな要因は、「塞ぎ込み諦めてしまうこと」であると思うのです。

 

40代までなら、まだまだ巻き返せると息巻いていても、50歳に突入すると、先がほぼ見えてしまいます。

 

本田さんは「マイルドな絶望感」と表現されていました。

 

しかし、自分の能力や体力の限界を知ることは悪いことではなく、自分の得意なことに注力でき、自分の不得意なことには時間を掛けないという選択と集中が可能になるのです。

 

これまで出来ていたことが出来なくなってしまったと悲観する必要はありません。

 

むしろ、それでも出来ることが明確になってくるのです。

 

無駄なことをせずに、自分の本当にやっていて楽しいことを探して、続ければいいのです。

 

私はこうした危機を乗り越えるための本田さんの素晴らしい考え方に、もう1つ付け加えたいものがあります。

 

それは「学び続ける姿勢」です。

 

ある統計調査によると、日本における社会人の半数近くは自主的な学びを行っていないという結果が出ています。

 

それも年齢を重ねるごとに、その割合は増えているのです。

 

なぜ、日本で働く人は、そうなってしまうのでしょうか。

 

一説では、次の2つの要因があるといわれています。

 

・雇用流動性が低いこと

 

・特定の組織内における経験を重視する傾向があること

 

日本において、転職する人は、欧米に比べると非常に少ないといわれています。

 

加えて、どこで、どんな仕事をしていたのかという経験が重視される傾向があるといわれています。

 

ですから、日本で働く人の多くは、こういう事を考えているのではないでしょうか。

 

「もともと転職するつもりもないし、会社の組織の中で仕事さえしていればそれなりに給料はもらえるし、今更勉強しなくてもいいか。」

 

そこで続けてさえいれば、それなりに暮らしてはいける。

 

そうすると、単に年を取って、好きなことだけをして生きていくのは難しいのではないか。

 

「学び続ける」ことを加えて、好きなこと、得意なことを磨く必要性を感じた次第です。