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第84号 日本人特有の集団的手のひら返しとは

 

週末土曜日は、家の掃除、筋トレ&ランニングマシーン、図書館で読書という過ごし方になりました。

 

このブログと同様、3日坊主にならずコンスタントに継続している習慣です。

 

さて、静かな図書館で心地よく雑誌を読んでいると、これは共感できるという記事が目に留まりました。

 

本日は、そのことについてお伝えしたいと思います。

 

週刊ダイヤモンドというビジネス雑誌に掲載されていた次の記事です。

 

”ゴーン氏逮捕でフランス社会から見える日本の「集団的手のひら返し」”

 

フランスを拠点に主に欧州・日本・アジアを中心とした数多くの企業のコンサルティング事業を手掛けておられる永田公彦さんという方が執筆されています。

 

言わずと知れた日産のゴーン元会長の逮捕について、日本人の反応が特異であるように感じるとのお話をされています。

 

もちろん日産は日本企業ですから、日本人がブログ、SNSなど様々なメディアを通じて情報発信するのは理解できるのですが、ここまで一斉にネガティブトーンで語られるのはどうしてか、という点に注目したと言われます。

 

これまで日産の危機的な状況からV字回復を果たし、日産復活の立役者となったゴーン氏。

 

私の地元の近くには昔から日産の巨大な工場がありました。

 

それを閉鎖すると耳にしたとき、私は、「こんな巨大な自動車工場をなくすなんて、撤去だけでも莫大な費用が掛かるだろうし、そんなこと簡単にできるはずがない」と本気で思っていました。

 

でも、ここも含め5工場も閉鎖したのです。

 

広大な更地になった景色を見て、本当にできるんだ、凄い力だなぁと感心していたことを覚えています。

 

しかし、今回の件に端を発し、”救世主”から”独裁者”へと見方が変わった日本人の特質を「集団的な手のひら返し」と表現されます。

 

「集団的な手のひら返し」をこう説明されます。

 

・風見鶏のように、ある人物に対する周りの評価が、一気に「良い人」から「悪い人」に振れること。

 

・それまで社会から肯定的にみられてきた人物が、権力者から急に三下り半を突き付けられ、その瞬間に社会からの目が冷たくなり、その人物が攻撃の対象となる現象。

 

「風見鶏」という比喩を使うところがポイント。

 

人間の意識・行動は何かの力によって簡単に変えられてしまうという事でしょうか。

 

これをわかりやすく会社の職場に置き換えて2パターンで解説されます。

 

1.平社員

 

「右に向かう社員が良い社員」と考える上司が、「左に向かう社員が良い社員」と考える新任のトップの意向に従い、ある日突然方針転換した。

 

これにより、多くの同僚が、左を見て仕事をするようになった。

 

しかし、自分はこれにどうも納得できず左に方向転換できないでいた。

 

すると、これまで良い関係であった上司や同僚たちが、無言のまま、自分に対する態度が急に変わり、冷たくなった。

 

2.管理職

 

自分が正しいと信じる方針について、上司の理解を得て、自分の部下たちも全員その方針に賛同して、前向きに取り組んでくれていた。

 

ところが、別の方針を示す上司が赴任し、どうしてもそれに納得できず対立した。

 

これを察してか、これまでの方針を支持し良い関係を持って共に歩んできた部下からの態度が変わり冷たくなった。

 

いかがでしょうか。

 

ピンとくるところはありましたでしょうか。

 

皆さんなら、上の例で挙げられている、「右に向かう」「左に向かう」「正しいと信じる方針」「別の方針」の内容には、どんなワードを入れられますか?

 

例えば、次のようなことが考えられます。

 

従来の発想にとらわれず、新しい柔軟な発想でチャレンジすることを良しとしていたこれまでの上司から、厳格なルールに基づいた運用を徹底し、これまでと異なるやり方を試すことさえ認めなくなったリスクを極端に嫌う新しい上司。

 

他部署との情報共有や親睦を図る目的とした会食を認めていたこれまでの上司から、情報漏洩を懸念して他部署との会食を厳禁というルールを決めた新しい上司。

 

永田さんはこの「集団的な手のひら返し」は日本人社会の特質の1つであると主張されます。

 

なぜ日本人なのでしょうか。

 

それには3つの要因があるといいます。

 

1.権威主義

 

2.集団の和

 

3.徳治主義

 

1の権威主義について、少し前、ジャーナリストの池上彰さんのテレビ番組で、日本企業の組織形態は、日本の高度経済成長を支えたひとつの要因であると紹介されていました。

 

それは、トップを社長として、部長、課長、係長、一般職というピラミッド階層をいいます。

 

職位が上の者の指示に忠実に従う、この上意下達の仕組みこそが、これまでの日本経済を支えていたのです。

 

しかし、これが今、成長を阻害しているという声も一方であります。

 

これについては、また別の機会でお伝えしたいと思います。

 

2の集団の和

 

自分のエゴや考えを犠牲にしてでも、集団の和や社会全体の流れに迎合してしまうことです。

 

自己主張することが美徳とされるアメリカに比べ、他人に迷惑をかけない、一人だけ目立つことをあまり良しとしない日本人ならではの傾向かもしれません。

 

3の徳治主義

 

日本人は、統治者、つまり人を治める立場であるなら、実力・実績だけでなく、「徳」を持っていなければならないという孔子の儒教的思想に影響を受けているといいます。

 

つまり、日本でトップに立つ者は、能力・知識・実績を中心にして評価されるのではなく、私生活を含めた人格や徳までも含めて評価されるということなのです。

 

儒教については、私の考えを述べている号がありますので、こちらもご参照下さい。

 

第62号    「菜根譚」が教えてくれること

 

昨日まで良い関係で共に歩む仲間だと思っていたのに、何かのきっかけから、急によそよそしくなったり、そっぽを向かれたりして、狐につままれる思いをした人は少なくないのではないかと筆者はいわれます。

 

「狐につままれる」

 

全く自分が理解できない呆気にとられた状態。

 

この著者の分析が正解かどうかは私にはわかりません。

 

けれども、自分に違和感のようなものがあったなら、その背景、文化、教育、環境などあらゆるものから推論する習慣を身につけることで、「?」から「!」に変化する可能性があるのではないか。

 

こうした習慣があれば、世の中の見方も変わったりして、もっと人生を楽しめるのではと感じた次第です。