昨日は、JCDA(日本キャリア開発協会)主催のキャリアコンサルタント技能講習組織内キャリア形成を受講してまいりました。
これまでこうした技能講習をいくつか受講してきましたが、今回は、企業内の組織に関わることを想定した実践型の研修でした。
正解のない答えを見つけるという意味で、学びが深かったと感じましたので、これについてお伝えさせていただければと思います。
この研修では、与えられたテーマをもとに、グループディスカッションをして、まとめたものを他グループに発表するといったスタイルがメインでした。
この一日研修の中で、特に学びになったと思えたのが、「外部専門家としての支援」というテーマ。
設定は次のとおりです。
入社して1年以内に辞める新入社員が、全体の2割という企業。
その会社は5年前に吸収合併されています。
新入社員の職場定着化と自立的人材の育成を目指し、新入社員研修と個別カウンセリングの実施を企業の人事課長より依頼された。
専門家であるキャリアコンサルタントとして、どういった関りが出来るかをグループで意見を出し合い、依頼主に提案してみましょういうものでした。
シンキングタイムの後、まずは順番にグループ内で発表します。
グループは4名、私は一番最後に発表しました。
皆さん、新入社員のモチベーションを高めるプログラムをたくさん出されます。
グループメンバーの発言を聞きながら、「あれ?」と思うところがありました。
専門性の高い素晴らしいプログラムを提案されているのですが、設定されている会社の事情や人事課長の言葉を汲み取った上での提案がほとんどなかったのです。
それらの提案は、この会社やこの依頼主でなくとも、汎用的に使えてしまう提案であるとも言えます。
あらかじめ断っておきますが、こうした提案が良い・良くないという話をしたいのではありません。
講師からは、この課題の説明時に、こう言われました。
「これに正解はありません、皆さんがキャリアコンサルタントならではの提案をして下さい。」
一時期、採用教育の実務を担当していたこともあり、私はこう提案しました。
「そもそも吸収合併されたこの会社に、時間をかけて人を指導・教育する文化があるのか疑問。」
「人事課長の発言からは、現場との軋轢に悩んでいるようにも見える。」
「だから、人事課長が部門長や工場長に、何のために新入社員の研修、OJTトレーナー制、個別コンサルティングを実施するのか理解してもらわないといけない。」
つまり、指導教育するためのベースを作って、まずは関係者の協力体制を整えた上で実施しましょうというものでした。
グループの皆さんは、少し考えられてから、意見を述べられ、結果私の意見も盛り込んで組み立てようということになりました。
そして完成後、今度は他グループへの発表が始まります。
そこでいくつかこんな質問が出ました。
「これだけの研修プログラムは、誰がやるのですか?」
という率直な疑問。
私も一年でこれだけのことを本当に出来るのだろうか、と心の中で思っていました。
一方でこれをやれば、十中八九新入社員のモチベーションが上がるはず、でも・・・
発表後、自分のグループメンバーで話し合いをしたのですが、その時のお一人の方が印象的に語られたのです。
「私たちは、キャリアコンサルタントとしての専門性を活かした提案を人事課にするべきであるし、研修プログラム企画担当者ではないはず。」
「それを取り入れるか、全部やるか、一部やるか、全くやらないかは、依頼主が決めること。」
「やるからには、専門家として関係者が満足できるものを提供したい。」
「そもそも、これがベスト、これしかない、みたいな提案しかできないようではプロとして不十分、複数の選択肢も提供出来るのがプロ。」
なるほどと思うと同時に、勢いに押された感もありました。
また、別の方からは、違う切り口で語られていました。
「私は、営業経験があるからか、これまで依頼主のオーダーに忠実に応えることを至上命題としてきました。」
「しかし、依頼主が気にもしていない、けれども大切であると思えるものがあれば、それを理解してもらえるよう専門家としての働きかけることも重要だ。」
「その依頼内容が果たして会社に良い影響を与えることが出来るのか俯瞰して伝えるという役割もあるのではないか。」
「そのまま受け入れてよいのか今一度考えてみる必要があるのではないか。」
確かにその通りだと思います。
しかし、私はこれらの話を聞いても、なお実現可能性を高めるようなアプローチを優先したいと思いました。
絵に描いた餅にしないよう、基本となる理念が広く行きわたるように関係者を巻き込む。
依頼主が何を悩んでいるのか、どうして欲しいのかをきちんと受け止めた上で、一緒に最善のプランを創り上げていく、そんな関わり方が私らしいアプローチであると感じました。
正解のない答え、納得解を見つけようと努めること。
藤原和博さんがいわれるこれからの時代に必要とされる力、情報編集力。
その大切さがよくわかった研修となったのです。