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第80号 心に響くものが大きければ、記憶というタンスの中を探し回る必要がない

 

年をとるにつれ、顔は思い浮かぶけれども、なかなか名前が出てこない、皆さんはそんな経験はありませんか?

 

・新しく教わった仕事はすぐ忘れてしまう。

  

・備忘録としてメモしたのに、それがどこにあるのか思い出せない。

 

・大事な資料を受け取ったはずなのに、どこを探してもなかなか見つからない。

 

・FAX送信時、表向きか裏向きか、どっちだっけ?

 

  

なんてことは、年齢を重ねるにつれ、顕著になる傾向があるのでは私は感じています。

 

私の場合、そんなことを少し年のせいにして自分を慰めていたわけですが、先日、こうした記憶に関して、小さいようで、大きいような発見をしたのです。

 

どういうことかといいますと、朝の通勤時、会社の最寄駅にあるトイレで起きたことです。

 

用を足して洗面所で手を洗おうと振り返った瞬間、鞄を持った中年男性とすれ違ったのです。

 

その時間、0.5秒ぐらいだったと思います。

 

振り返り、2度見もしませんでした。

 

する必要はなかったからです。

 

その一瞬だけで、テレビでしか見たことのない、一澤帆布製のビジネス鞄だとわかったのです。

 

テレビというのは、ビジネス向け情報番組のカンブリア宮殿です。

 

私が数ヶ月前に視聴した回に、一澤信三郎帆布の社長一澤信三郎さんが出演されていました。

 

そこで、オススメの鞄を一澤信三郎さんがこう紹介されていたのです。

 

「うちの女職人が、スーツ姿のいい男に持たせたいと考案したカバン」

 

これです。

 

私はさほど、ものにこだわることはありません。

 

まれに、お洒落なスーツと出会い心を動かされた時に購入してしまうことがあります。

 

詳しくは、こちらをご覧下さい。

 

第70号 服を変えるのではなく、服に合うように自分を変える 

 

さて、私が一瞬でその鞄とわかったのは、テレビを見るときに、いつか買いたいと思っていたからです。

 

私は「スーツ姿の似合ういい男だ」と言い切る自信はありませんが、縦に入った赤やレンガ色テープのアクセントが印象に残っていたのです。

 

それを実物で初めて、しかもすれ違いざまの一瞬で認識することができたのは、どうしてでしょうか。

 

もう一つのエピソードをご紹介します。

 

昨年の夏、家族全員で3泊4日の初めての宮古島旅行に行きました。

 

経験賛歌を標榜するものとして、実現させたいアクティビティがありました。

 

・伊良部島にある「青の洞窟」と呼ばれる場所で、5人家族全員で、ボートシュノーケリングをする。

 

・当時小学生の次男と私とで、ビーチ体験ダイビングをする。

 

夏休み期間中の旅行のため、これらを数ヶ月前に予約した結果、きっちり満喫できたわけですが、この旅行で私が一番印象に残っていたのが、あるシュノーケリングスポットでした。

 

その場所の存在は、当日まで知りませんでした。

 

体験ダイビングを指導してくれたインストラクターに、何処かいいスポットありませんかと尋ねたら、ここがオススメと教えていただいたのです。

 

そこは宮古島と橋で繋がっている来間島の長間浜というシュノーケリングスポット。

 

実は、ガイドブックにもあまり掲載されていないような隠れスポットなのです。

 

それもそのはず、細い道路の行き止まりには4、5台ほどの駐車スペースがあるだけ。

 

着替えができるような場所も塩水を洗い流せるような設備も用意されていない、自然のままの空間なんです。

 

しかし、そこから歩いて数十秒で、コバルトブルー&エメラルドブルーの絶景の浜辺が目に映りました。

 

人も少なく、時間が経つことも忘れて、色とりどりのたくさんの魚と戯れていました。

 

それから数か月だったある日、テレビをぼーと見ていた時、ハッとした瞬間が訪れたのです。

 

それは日商エステムという会社のCMに女優の相武紗季さんが、浜辺に向かって走る姿を上空から撮影した映像が映し出された瞬間でした。

 

相武紗季 CM 日商エステム 「私だけの未来へ」篇

 

「あっ、ここは!!!」

 

と心の中で叫んでいる自分がいました。

 

これも1秒間ぐらいでしょうか。

 

「長間浜に違いない」

 

確信はありましたが、本当なそうか確かめたいと思い立ち、すぐネットで検索しました。

 

いろいろ探した結果、長間浜でほぼ間違い無いことがわかりました。

 

以上、私の思い出とともに、長々と語らせていただきましたが、この話に共通すること。

 

それは、覚える努力をしようとか、忘れないようにしようともしていないことです。

 

情報化社会といわれて久しい現代、新しいものがどんどん目の前にやってきては、少し前の情報は上書きされるように消えてしまう。

 

でも、自分の心が揺さぶられたりしたことは、その後全く意識をせずとも、ふとした瞬間に自分の記憶の奥底にある場所から、瞬時に目の前に現れてしまうのです。

 

だから、純粋に感動できる素直な感性を、常に持ち合わせていたい。


心を動かされる出来事をもっともっと増やしていきたい、そのように感じた次第です。