著者プロフィールの中でお伝えしているのですが、私が好きなアーティストのひとりに、aimerさんという類まれな歌唱力を持つ女性シンガーがいらっしゃいます。
aimerと書いて”エメ”と読みます。
実は昨日、滋賀県大津市でコンサートがあり、そのライブを1人で見に行ってきました。
お恥ずかしい話ですが、私はAメロやBメロ、ベースとギターの違いが何なのか全く知らない、知ろうもしない、音楽については、ドが付くくらいの素人さんです。
こんな私ですが、以前たまたまaimerさんの「one」というノリの良いアップテンポな曲をyoutubeで耳にしてから、これまでのいろんな曲も興味を持って聴くようになり、一気にファンになってしまいました。
おそらく私は、彼女の唯一無二の歌声に惹かれているのだと思っています。
これまでの人生で行ったコンサートの数は本当に数えるほどなのです。
ちなみに一番最初から順を追って全て挙げてみます。
・由美かおる
・チャゲ&飛鳥
・B'z
・ヒルクライム
なんと以上です。
しかも、由美かおるって?
知らない人もいるでしょう。
私が高校生の時、当時の校長先生と由美かおるさんに繋がりがあって実現したのです。
「由美かおるオンステージ」として母校の体育館でショーをされたのです。
この時もスタイル抜群でした。(笑)
「これもコンサートにカウントするの?」と言われそうですが・・・
さて、そんな音楽オンチの私が期待に胸を膨らませ、開演3時間前に現地入りしました。
滋賀県には比較的訪れる機会が少ないので、周辺を散策しようとしてのことでした。
時間は十分ありましたので、本屋さんに行ったり、会場から徒歩で20分程度かかる市立図書館まで行って読書をしたり、周辺を少しだけウロウロしていました。
昨日も気温は下がり、とてもじっとはしていられませんでしたが、澄んだ空気の中で、湖岸を歩きながら琵琶湖をゆったり眺めたりしていました。
さて、17時から開演です。
最初の曲は、私が大好きになったきっかけの「ONE」です。
このコンサートのタイトルにある「soleil et pluie」ですが、フランス語で太陽と雨という意味だそうです。
明るい曲調を太陽に、バラードを雨に見立てるようにして、コンサートで披露する曲を構成しているとか。
私の知っている曲を次々聴くうちに、やっぱり彼女は太陽より雨が似合う、もっと言えば土砂降りのような激しい雨も合うような感覚にとらわれました。
そうして、終盤からは太陽の曲が再び始まりました。
私はコンサート慣れしていないせいで、あまり手を振ったり、手拍子をしたりしない人なんです。
しっかり集中して聞きたい人なんです。
その時、自分がどのような顔をして見ているかというと、おそらく目を細め、顎は少し上げ気味で、口を紡ぐんで、首をわずかにゆっくり前後にして聴き入っているはずだと理解しています。
これを他人からまじまじ眺められてしまうと、結構恥ずかしいかもしれませんが・・・
ただ、これはコンサート会場全体を盛り上げたいアーティストにとって、大変迷惑なオーディエンスですね。
でも、このコンサートでは、aimerさんのせいで随分様変わりしている自分がいました。
私が知らないだけでしたが、メディアにあまり露出しない彼女は、どちらかと言えば暗い影のあるアーティストなんではと、勝手に想像していたのです。
しかし、全くと言っていいほど、想像していたのと違いました。
私は舞台正面の4階から大きく見下ろすように眺めていたのですが、観客に大きく手を振ったり、親しみを持って語りかける様子を見て、私もついつい乗せられてしまいました。
本当に重厚感たっぷりに歌う姿と、キャピキャピして舞台を走り回る一生懸命な姿にやられてしまうのです。
これは「ギャップ萌え」という表現が的確かどうかわかりませんが、コンサートで初めてかわいらしい彼女を見て、ますますファンになりました。
そして2時間ぐらい過ぎた頃でしょうか、そろそろクロージングの空気になってきているではないですか。
披露された曲は、それまで15曲ぐらいです。
もうあと10曲ぐらいは聴きたいのに、なんて勝手に思っていたところ、MCというのでしょうか、語りが始まったのです。
これが私が思っている以上に長かったんです。
これは嬉しい誤算でした。
その中で、私の心に響いたのは、次のような言葉でした。
・私には音楽しかない。
・コンセプトを変えて臨んだ今回のコンサートが皆さんに受け入れてもらえるか不安だった。
・でも、この好きな音楽で皆さんに少しでも元気や勇気を与えられるような存在でいたい。
・新しいことにも挑戦して自分の音楽を「追及」していきたい。
この内、特に印象に残ったのは、「追及」という言葉。
彼女はこの言葉を、形を変えながら4回発していたと記憶しています。
人は、自分にとって大切だと思うこと、相手に本当に伝えたいことを繰り返し語るものです。
何故、彼女は「追及」という言葉を繰り返し使っていたのだろうか、そんなことをぼんやり考えながら、気付けばアンコールで最後の曲「星の消えた夜に」が聴こえてきました。
この日、私の一番のお気に入りがこの最後の曲でした。
ずっと聴き続けていたい、このまま眠りに陥りたい、心が洗われていくような、また心に染みわたってくるような穏やかな感覚を覚えた歌声でした。
大満足なコンサートでしたが、先程の「追及」という言葉が気になり、自宅に帰る途中にネットで少し調べてみました。
すると、彼女が15歳の時、突然声が出なくなり、半年間しゃべることもままならなかったことがわかりました。
将来は歌手になると思っていたのに、突然夢を絶たれたような絶望的な気持ちになったそうです。
そう感じた時、自分はこんなにも歌うことが好きだったんだと改めて気付いたといいます。
そして、治療とリハビリを経て、唯一無二の今の声が出せるようになったそうです。
本当のところは、本人しかわからないことでしょうけれども、私はこのように想像しました。
「彼女は自分の価値が何処にあるのかを常に問い続けるストイックさを持ち合わせ、またそれをできるだけ多くの人に共感して欲しいという願いが強い人ではないか。」
彼女の歌声を知っている人なら理解していただけると思うのですが、持ち味は「深みのある低音ハスキーボイス」。
他にもたくさんあると思いますが、それを一つの武器と感じていると思うのです。
その彼女の武器を活かせる歌をたくさん作り続けるとともに、それが独りよがりにならないように、また1人でも多くの人に届けられるように、ファンに対して真心を込めて接しているように感じました。
そういえば、今回のツアーの告知で彼女がこんなことを言っていたのです。
「今回のツアーは、わたしのライブ未経験の方はもちろん、ライブ自体が初めての方でも、めいっぱい楽しめるツアーにするつもりです。」
「これからもどんどん進化していくつもりでいるので、今しか歌えないわたしの歌を感じに、受け取りにきてほしいです。」
「わたしのことを気になってくださっているあなたの感性を、肯定できるように歌います。」
彼女の音楽に向き合う真摯な姿勢、ファンを大切にしたい優しい気持ちが、彼女の類まれな歌声を一層引き立てている、そんなことを感じたコンサートだったのです。