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第75号 電話に出た時いつも「大変お待たせしました」と言い続けるとどうなるか

 

皆さんは、自分のマナーや接遇に自信があると思っていらっしゃいますか?

 

私は大丈夫と胸を張って言える方は、世の中にそれほど多くはいないと思います。

 

そもそも「マナー」と「接遇」の違いは何でしょうか。

 

「マナー」とは思いやりの気持ちを大切にし、自然な振る舞いをすることで、周囲の方への心遣いを表すことです。

 

「接遇」とは出会った方に対して、おもてなしをすることで、「あなたは特別です」という態度を表すことです。

 

的確な表現ではないかもしれませんが、「マナー」は「拡散」、「接遇」は「集中」というイメージでしょうか。

 

私も「接遇」「マナー」については、出来ているという自信は正直ありません。

 

しかしながら、こうした「接遇」「マナー」について、万人に当てはまると自信を持ってお伝え出来ることがあります。

 

それは自分のことはさておき、他人の態度や言葉遣いはとても気になるということです。

 

これは本当に不思議なことですが、厳然たる事実です。

 

・満員電車であるのに足を組んで鞄を座席に置き続ける人

 

・トイレが終わりスリッパの向きを揃えずに出ていく人

 

・パソコンで作業中の方に「〇〇さん」と声を掛けたら「ハイ」と言ってからも顔をこちらに向けずにパソコンを見続けたまま話を続ける人

 

・電車内で必要と思えない長話を延々と携帯電話でする人

 

・部内で大人数に回付する必要のある回覧が自分に回ってきた後、隣にいる長期出張中の人の席に、何も考えずにポンと置いてしまう人

 

などなど、いくつも挙がってしまいます。

 

上記のようなことに共通して言えることは、自分の行動が常に最優先となり、相手に対する配慮が大きく欠如していることです。

 

そういえば思い当たる節がある、これ当てはまっているかもという方、ご安心下さい。

 

まだ意識がある方は、十分改善の余地があります。

 

それより問題は、これ自分のことじゃないと思って、実際は無意識のうちにやってしまっている方です。

 

つまり自覚なくやっている方です。

 

ここで最も重要なことは、している本人は涼しい顔で気にならないけれども、他人がやっているのを見せられると、めちゃめちゃ気になる方の割合が多いということです。

 

私が数年前、部署は違いますが、同じフロアで一緒に仕事をしていた男性の話をします。

 

その男性は真面目で誠実そうな雰囲気が漂う30代の中堅社員。

 

実際話をしていても、相手を問わず丁寧な対応をしていることが分かります。

 

しかし、1つだけ気になることが出てきたのです。

 

それは、その男性宛てに掛かってきた電話を取り次いでもらった後の第一声が、決まって「大変お待たせしました、◯◯です。」となるのです。

 

取り継ぐ時間が数秒であれ、数十秒であれ、このフレーズは変わらないのです。

 

あまりにもそれがずっと続いたので、私の席の近くにいた男性が思わずボソッと呟いていました。

 

「ちっともお待たせしてないやないか・・・」

 

気がついていないのは当事者だけ、周囲のほとんどは分かっているのです。

 

「慇懃無礼」という言葉があります。

 

・言葉や態度が丁寧すぎて、かえって無礼であるさま。

 

・あまりに丁寧すぎるとかえって嫌味で誠意が感じられなくなる。

 

必要以上に遠慮したり、丁寧な対応をすると、相手はどう思うでしょうか。

 

「そんなに待っていないのに、なぜ大変というのだろうか?」

 

「これはこの人の枕言葉のようなもので、誰に対してでも同じことを言っているのかもしれない。」

 

冒頭にお伝えした「接遇」の話に戻ります。

 

「接遇」とは、あなたは特別な人なんですという態度を表し、それを相手に感じ取ってもらうことでした。

 

そうするとこれは、全くの逆効果になっているのです。

 

しかし、周囲から指摘されない限り、本人は自分では分からないものなのです。


習慣的な言葉遣いをしていることに意識を向け、「あなたを大切に思っています。」「あなたを歓迎しています。」「あなたに敬意を持っています。」というような気持ちが相手に届いているのだろうかと、一度自分を振り返ってみる。

 

また、相手を取り巻く状況、声の調子、表情などを総合的に組み合わせて、最適な言葉で相手に返すことの大切さを、最近ヒシと感じた次第です。