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第70号 服を変えるのではなく、服に合うように自分を変える

 

週末に就職相談会のお手伝いに大学のキャンパスに行ったことを前号でお伝えしましたが、実はその日は私にとってのちょっとした記念日だったのです。

 

具体的な数値は申し上げませんが、数年前の私の体型は、完全にメタボでした。

 

運動などは一切せず、仕事をして食べて寝るだけの生活を長年続けていたのですから、当然と言えば当然です。

 

人の習慣というか、慣れというものは、思考を支配するのだということを身をもって経験しました。

 

随分前ですが、私は一時期、そこそこ良いスーツを着ることに興味がありました。

 

やはりビジネスマンなら、いいスーツを身にまといたいという気持ちがあるものです。

 

私にはよく利用する紳士服専門店があり、買うつもりもない時でも、プラプラして眺める事もありました。

 

その時に「これは良い!」と思うことがあります。

 

しかし、それはきまってスリムサイズ。

 

Y体です。

 

私はある時点からずっとAB体を購入していました。

 

これは私の主観ですが、正直、いくら素材が良くても、AB体にピシッと、パリッとした感じはありません。

 

どうしても、だぼっとした、やぼったい雰囲気になりがちなのです。

 

こうして、お店でのスーツの選び方が変わってしまいました。

 

他のコーナーは一切見もせず、毎回AB体のコーナーだけを回るのです。


「自分にはこれしかない」


そう決めつけているかのように!


当然ですが、それ以外を買っても、着れないからです。

 

そうこうしている内に、次第にスーツ自体に興味も無くなり、お店に訪れることも無くなりました。

 

それから時が過ぎ、とあるきっかけから、短時間ですが、週末にスイミングをするようになりました。

 

また、お気に入りの紳士服店の株主になったため、株主優待の割引券をもらうようになりました。

 

ある時、何気なくお店に訪れ、スーツを眺めていると、Y体ですが、桂由美ブランドのとてもカッコいいスーツを見つけたのです。

 

明るい光沢のある縞模様の紺色のスーツ。

 

何とかズボンは入ったのですが、ピッタリすぎて、屈むと破れそうなのです。

 

そこでは、衝動買いをせず、いったん家に帰って再考しました。

 

どうするか思案している時、私の好きな経営者の一人、安田佳生さんの本のことを思い出したのです。

 

料理店を選ぶ時には、自分に合った店を選んではいけない。

 

スーツを選ぶ時には、自分に合うスーツを選んではいけない。

 

少し居心地が悪くても、自分の琴線に触れたなら、その感覚を尊重する。

 

自分には合わないと考えるのではなく、今の自分には合わないかもしれないが、それが合うような自分になるということ。

 

変えるのは、お店でもなく、スーツでもなく、自分の方だということ。

 

それは、自分の姿・考え方です。

 

その言葉を心に刻んで、カード払いで思い切って購入してしまいました。

 

しかしその後、着ることがないまま一年以上が経過しました。

 

その間、スイミング、ランニング、筋トレを続けていたのです。

 

そして先週末に、初めてそのお気に入りのスーツを身にまとい、大学で就職相談会のお手伝いをしていました。

 

サッカー界のレジェンド三浦知良さんは、「スーツは緩くないほうがいい、ぴったりの方が気持ちも引き締まるし、何よりもカッコいい」と言われます。

 

お手伝いとはいえ、学生に向き合い、有意義な時間が過ごせたのは、このスーツのおかげであると私は思っているのです。