週末とある大学で3年生を対象に地方にある複数の企業紹介のお手伝いをすることになりました。
相手がある話のため、少しぼやっとした内容になるかもしれませんが、ご容赦下さい。
学内に設けられたいくつものブースに、興味を持つ学生が訪れ、学生が望む企業情報の提供および就職活動のアドバイスをしていました。
私が受け持つブースにはトータル8名が訪れたのですが、その内の2人がとても印象的であり、かつ学びがありましたので、そのことについてご紹介させていただきます。
実は、企業の紹介が主たる業務でしたが、半数以上はその紹介の必要がなかったのです。
何故なら、半数以上は就職先として公務員を希望していたからです。
売り手市場なら学生は、大企業・有名企業に興味を持つのではないかと、勝手に想像していました。
さて、その内の1人の男性は、ある都市部に隣接する県の出身で、大学卒業後は公務員として地域の発展に貢献したいとのこと。
彼と話をしていると、実はこの私立大学に入学したことが、不本意であったと言うのです。
本当は、地元の県に隣接する都市部の国立大学に行きたかったのですが、学力が足りず不合格となったと言います。
浪人して親に迷惑をかけたくなかったようで、仕方無しに私立にしたというのです。
ここも有名私立大学だというのに、本当に上昇志向が強い学生だとなと感心しました。
さらに、同じ公務員でも地元の県に隣接する都市部の公務員でなくてはいけないと言うのです。
何故、そこに拘るのか尋ねてみました。
すると、彼はこう言うのです。
私が幼少の頃、その地元は繊維業が盛んで、街全体に活気があった。
しかし、次第に製造拠点などが大都市圏へシフトしていくようになり、随分前からシャッター街として散見されるようになってしまった。
少子高齢化が進み、若者が街を去り、町全体が活力を失ってしまった。
私は、再び住民が生き生きと暮らしていける活気のある町に戻したい。
ただ、この地元の県を自力で復興させることは、現実的ではない。
だから、隣接する大都市の公務員になり、この都市部を更に発展させることによって、そのパワーを隣の地元まで波及させたい。
これは一企業では難しい、だから影響力のある公務員になりたいんです。
こんな学生がいるんだ、正直感動を覚えました。
自分が就職活動をしている時、こんな事が言えただろうか。
今の若いもんは軟弱で、やる気がない、覇気がない、わしらが若い頃はもっと・・・
年を取るとこんなことをつぶやく人もいるでしょう。
とかく世間を十把一絡げにしがちですが、今も昔も、いろんな人が存在しています。
年寄りであれ、若者であれ、考える人は考えているのです。
もう一人の女性の話ですが、彼女もまた公務員を第一志望にしていました。
この女性が最後の学生で、終了のベルが鳴るまで、マンツーマンで40分程度話し込みました。
最後になった理由は、ここに来る直前まで、2時間程度の討論会をしていたというのです。
討論会?
それは、公務員向けの集団面接対策の一環で、大学側が企画したものなのです。
また凄いのが来たか!
公務員、大人気だ!
さて彼女の志望理由は何だろうか?
興味が先行して、尋ねてみました。
しかし、その答えが的を射ないのです。
「私自身も、はっきりと分からないんです。」
「私は多分仕事ができないと思うんで、公務員がいいと思うんです。」
!!!
先程の彼とは打って変わっての展開です。
そのため、少し深掘りすることにしました。
「これまでアルバイトの経験は?」
「どうしてそう思われるんですか?」
「そこでの仕事が上手く出来ていなかったから、そんな風に思われるんですか?」
すると、イベント企画などの仕事で、アテンドをした事があるとのこと。
何か腑に落ちない。
何か語られていない重要なことがあるのでは?
そして、世間話をしているうちに、何故彼女が公務員に拘るのかが少しずつ分かってきました。
リーマンショック以降、お父さんが勤める会社の経営が傾いて、大変な苦労をされたようです。
また、とある事情により、これまで専業主婦であったお母さんが働かなければならなくなったのですが、女性が途中から正社員で探すことは非常に難しかったとの事でした。
このように身近にいる家族の辛さを目の当りにし、彼女はこのように考えたのです。
企業なら倒産したり、リストラされる可能性はあるが、公務員なら国があり続ける限りは、大きなミスを犯さない限り、クビにされることはない。
これまでの経験の中で、リスクヘッジすることや先を読み、それに向けて準備をすることの重要性を学んだのだと思います。
もし彼女があまり苦労せずにこれまで生きてきたなら、「公務員」というものに対して全く違う捉え方をしていたかも知れません。
特に話の終盤で彼女が呟いた印象的な一言があります。
「権力を持ちたい。」
これの意味するところは何なのか。
これは言い方は違えど、1人目の彼が公務員に求める「影響力」と同義だと思うのです。
しかし、「権力」という言葉に彼女固有の想いが込められているようでならないのです。
時間がなくて聞けませんでしたが、これまでの彼女の人生が、それを欲することになったのだろうと思います。
終了時刻になったので、「公務員目指して頑張って下さい」とエールを贈って、見送りました。
久しく大学生と話をしていなかったため、非常に新鮮な気持ちになりました。
また、真剣に将来のことを考える学生には、これからも何らかの支援をしたいと思いました。
いろんな年齢層、いろんな価値観の人と関わりあうことは、時代遅れにならずに、社会の今をリアルに知る事が出来る、そんな学びの多い1日でした。