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第48号 池上彰さんから「良い質問ですね!」と言ってもらうためには

 

前号に引き続きピョートルさんから学んだことをご紹介します。

 

今号は、日本企業が抱える課題とそこで働く人との関係性に焦点を当ててお伝えしたいと思います。

 

ピョートルさんは、多くの日本の企業は、「経営目標を達成するために従業員がいる」と捉えていることが問題と指摘されます。

 

これでは、能力のある人材を本当の意味で有効活用できないと。

 

世の中にいる多くの人事系コンサルタントは、コスト削減だとか、グローバル企業へ向けての戦略を真っ先に掲げてしまいます。

 

そうではなく、「従業員の自己実現のために会社はあるのだ」と考える企業が、従業員のパフォーマンスを最大限に発揮できるのだと言います。

 

つまり、まず最初に、個人の自己実現があり、その結果として会社戦略が実現するという順番。

  

どちらも最終的に達成すべき課題であることは理解できるところですが、ピョートルさんは順番が違う企業が多いと言うのです。

 

また、日本で製造しているテレビのリモコンについてこう言及されます。

 

どうしてこんなにボタンが多く、スライドしたらまださらにボタンが隠れているような複雑なリモコンを作り続けるのか、ピョートルさんは数社の製造メーカーに尋ねられたそうです。

 

するとそれは次のような驚くべき回答であったとのこと。

 

「他社も同じようなリモコンを作っているから」

 

起業した初めの頃は、困っている誰かの喜びのために商品やサービスを提供したいという大義で仕事をしていたのに、会社が大きくなると、いつの間にか「他社がやっているからうちもやる」が日本企業の常識となってしまったという一例です。

 

こうした会社で働き甲斐を持って仕事をしろと言われても無理があります。

 

エンゲージメントといわれる社員の会社に対する愛着心や思い入れの指標があります。

 

最近の調査によると、そのエンゲージメントの世界平均は63%、一方の日本は38%と低い位置にあると言います。

 

これからも企業が成長を持続していく、また価値のあるサービスを世の中に提供していくには、そこで働く人たちがまず幸せでなくてはいけないという考え方があります。

 

人が幸せに働き続けるために、5つの段階があると言います。

 

①自己認識する

 

②自己開示する

 

③自己表現する

 

④自己実現する

 

⑤自己効力感を上げる

 

①→②→③→④→⑤への発展段階は、個人→組織・団体→社会という発展段階とリンクしています。

 

ここで挙げられた自己実現。

 

自己啓発とは意味が違うと言います。

 

現代のビジネスマンの多くは自己実現ではなく、自己啓発を選択してしまっていると。

 

自己啓発とは自分の成長が第一、つまりそこには自己中心的な考え方が介在します。

 

一方、自己実現は自分一人の成長が全てではありません。

 

それは、自分のアイデアやポテンシャルには限界があると自覚し、周囲の人たちと協力しながらそれらをブラッシュアップさせて成長につなげていくもの。

 

誰かから与えられた役割の中で成長を目指すことではなく、自分のポテンシャルを開花させ、周囲にどのような影響を与えられるかを自分で考えることが大切であるというのです。

 

今、働き方改革という名目で、いろんな取り組みを行う企業が増えています。

 

例えば次のようなものです。

 

・オフィスのフリーアドレス制

 

・カフェでノートパソコン広げてビジネス談義

 

・オフィスの定時一斉消灯

 

こうしたこと自体、悪いことではないのかもしれません。

 

しかし、特に日本の企業は、上記の①自己認識、②自己開示をせずに、流行りの制度や仕組みをそのまま取り込もうとするから話はおかしくなるのだと。

 

ピョートルさんの本質を突く一番の肝がここです。

 

自己認識は、「自分はどんな人間か」「何をするためにここに存在しているのか」などを深く内省して、自分を理解することです。

 

一方の自己開示ですが、日本ではそれができる環境が職場にはほとんど用意されていない、つまりそうした文化があまりないと言うのです。

 

自己開示を促すためには、相手にとっていい質問をしてあげることだと言います。

 

私のメンターの一人である池上彰さんが、以前テレビ番組でよく使われていた「いい質問ですね~」というフレーズを思い出します。

 

ピョートルさんは質問には2種類しかないと言います。

 

「時間を無駄にする質問」と「人生を変える質問」です。

 

この後者の質問を上手く積み重ね、相手の自己開示を促すのです。

 

ピョートルさんはこの質問力といっていいスキルを高く評価されてます。

 

適正な質問ができることは、お互いの信頼関係につながります。

 

それが自己開示へとつながるのです。

 

適切な質問をできるようにするには、サイクル、トレンド、パターンを好奇心を持って、いろんな分野を学ぶこと。

 

その時、メモに取って、なぜこの場面で心を動かされたのか、自分の考えや理論とどういった関係があるのかを考えること。

 

こうした習慣がいい質問を生むことになります。

 

自己開示を促す質問力はこれからのビジネスマン必携のマネジメントスキルであると言います。

 

これはキャリアコンサルタントのクライエントへの関わり方と似ているように思えました。

 

相手のこれまでの経験を語ってもらい、その出来事が今の自分にとってどのような意味を持つのか内省を促す。

 

そして、そこから意味の実現に向かい、自己実現を達成する。

 

本を読んだり、セミナーに参加していると、いろんな知識が有機的につながっていることを実感できます。

 

今週末は、これに少し関連しそうな、自己理解支援ツールの体験とアプローチの習得を目指すセミナーに参加してきます。

 

こうした学びもまたこのブログで紹介させていただければと思います。