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第40号 自分にとってキャリア形成とは何かを考える

 

来月に日本キャリア開発協会(JCDA)主催のとあるセミナーに参加する予定です。

 

その事前課題の一つに、「自分にとってのキャリア形成とは何かを自分の言葉で人に言えるように準備をしてきて下さい。」というものがありました。

 

さて、皆さんはキャリアと聞いて、どんなことを想像されますか?

 

私見ですが、自分のキャリアを意識しながら生活する方は少数派のように思います。

 

どちらかと言うと、自分にとって良いことであれ、悪いことであれ、大きな転機が訪れる時などに意識するようなものではないでしょうか。

 

私は事務方の仕事をしている関係で退職願を見る機会があるのですが、転職理由でよく書かれているのが、「キャリアアップのため」です。

 

自分に大きな可能性を感じたり、または大きな不安を抱えたりした時に、自分のキャリアを振り返ることが多いのではと想像します。

 

ですから、こうしたセミナーで、普段あまり意識していない人にとって、キャリア形成とは何かを自ら問うことは有意義なことではないかと思います。

 

私が、キャリアコンサルタント資格取得講座で一番最初に学んだことが、キャリアの定義だったと記憶しています。

 

一般的にキャリアとは「積み重ねた経験」と言われています。

 

厚生労働省の定義は、次のようなお堅い表現でした。

 

キャリアとは、一般に経歴、経験、発展さらには関連した職務の連鎖等と表現され、時間的持続性ないしは継続性を持った概念。

キャリアは積んだ結果として職業能力が蓄積されていく。

 

一方でJCDAの定義は、次のようなものでした。

 

キャリアとは、環境との相互作用によって、生涯を通じて個人が構築し、個人により意味付けされたもの。

 

一般的にキャリアと言えば、キャリアウーマンという言葉があるように、仕事に特化した職業能力という意味合いが強いように思います。

 

しかし、上記の2つは、いずれも仕事という言葉を使っていません。

 

どちらも、学校卒業後就職してから退職するまでの仕事をしている期間だけをキャリアとして捉えていないのです。

 

それは、地域のボランティア活動、専業主婦(主夫)、家族と過ごす余暇なども含めた人生という文脈でキャリアを捉えているのです。

 

そうすると、ここで現実的な葛藤と向き合うことになります。

 

そうは言っても、実際に社会で働く際に、公園で子供と遊んだことや家で家事仕事をした経験が、これもキャリアですと、自信をもって言えるでしょうか?

 

一概にキャリアと言っても、やっぱり仕事に直接関わるものでなければ、さほど意味がないのではと考えてしまう人が依然として多いのではないでしょうか。

 

また、これとは別に、端折らないと一枚の履歴書に収まらないくらい職場を転々としている会社員は、それも全て自分のキャリアですと自信を持って言えるのでしょうか。

 

この疑問を解消するための1つの考え方として、JCDAのキャリアの定義が参考になると思います。

 

「生涯を通じて個人が構築し、個人によって意味づけされたもの。」

 

私は、この意味付けという言葉に大きな力が秘められていると感じるのです。

 

上記のようなことを採用面接時にアピールしたり、履歴書に記載したりするかどうかは別にして、結果的にそうした経験を本人がどう捉え、どれだけ肯定しているかが重要だと思うのです。

 

専業主婦(主夫)に徹していて、ある時暮らしに役に立ちそうなアイデアを思いつき、偶然商品化に至った。

 

販売は思わしくなかったが、チャレンジできたことに自信を持つことができ、次回作をすでに構想中である。

 

また、転職を繰り返してきた会社人生だが、自分が目指したいことは〇〇であり、それが実現できるような会社を選択し続けてきた結果である。

 

ここで大切なことは、これまでの積み重ねてきた経験に対して、無理することなく前向きな意味を自身で見出せるかかどうか。

 

いろんな部署を転々としてきた人は、次のような考え方をする傾向があると思います。

 

・便利に会社に使われて、自分のキャリアが定まらなくて不安になってしまった。

 

・いろんな事業部門を経験し、自分のキャリアが豊富になって、仕事の幅やものの考え方が柔軟になった。

 

どういうい考え方をするかは本人の自由です。

 

要は、自分にとってプラスに作用する前向きな考え方が、無理のない状態で維持できるかということ。

 

同じ場所に留まって、同じことの繰り返しの人生では、その考え方を身に付けるのは難しいと思います。

 

いろんな経験を積み、いろんな人の考え方を理解し、自分にプラスに作用する美味しいところだけを自分色に変えて取り込む。

 

こうしたことを繰り返していけば、自分のこだわりみたいなもの、つまり自分の軸が出来あがってくると思うのです。

 

私にとってのキャリア形成とは、次のような意味を持つと考えています。

 

「様々な経験や考え方に触れることで、自分は何屋であるという軸が次第に定まり、自己効力感を高めてくれる効果を持つもの」

 

自分にとっての「キャリア形成」とはどういう意味を持つのでしょうか?

 

一度言葉にしてみられることをお勧めします。