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第27号 プロマーケター森岡毅氏のマーケティング論から生き方を学ぶ

 

皆さんは、森岡毅さんというプロのマーケターの名前を聞かれたことはありますか。

 

マーケターとは、「マーケティング理論や調査に専門的な知識を持つマーケティング戦略立案者のこと」をいいます。

 

元ユニバーサルスタジオジャパン執行役員、現マーケティングノウハウカンパニー刀(カタナ)CEOです。

 

瀕死だったUSJを再生した立役者としてメディアに紹介されることが多い方です。

 

何年か前ですが、NHKのプロフェッショナルというテレビ番組で、森岡さんが特集されていました。

 

その時、なぜか子供と一緒に見ていたのですが、自宅でドラゴンクエストXをしている場面が少しだけ映し出されたとき、各職業のレベルが総じて高く、ビジネスの世界で忙しいはずなのに、どうしてこんなことができるのだろうと、子供も驚いていたことを思い出します。

 

ある情報によると、ドラクエXは7000時間以上されたとか。


凄すぎです。

 

子供の頃から、かなりのゲーム好きだったようです。

 

それが放映されている頃は、USJの森岡執行役員でした。

 

森岡さんは、ただ単にゲームをするのではなく、ヒットする商品を実際に試してみて、ユーザーを魅了する本質がどこにあるのかを見つけ、自社に活かすことができないかも考えておられたようです。

 

ご存知のとおりユニバーサルスタジオジャパンは、もともと、アメリカのユニバーサルスタジオを日本版として移植したもの。

 

ほとんどハリウッド映画のコンテンツをテーマパークにいろんな形で再現したものです。

 

USJの経営が悪化している中で、森岡さんはいろんな所にメスを入れていきます。

 

そもそも人がテーマパークに何を求めていくのか。

 

この本質を問うところから始めるのです。

 

そうすると、アメリカを模した映画のテーマパークにこだわり続けることが本当に大切な事なのかという疑問がわきます。

 

人は、テーマパークに、ストレスを解消し、非日常的なエキサイティングな体験をしようと訪れるはず。

 

であれば、この本質は「変えてはいけない部分」になります。

 

そうすると、映画にこだわるのは、「変えても構わない部分」になります。

 

その時に、森岡さんは非常に分かりやすい2つの選択肢を用意されます。

 

・これまでと違うことをやるのか?

 

・これまでと同じことを、違う方法でやるのか?

 

USJを何度も行かれている方は、感じられているかもしれませんが、森岡さんがUSJを退社された後も、いろんなアトラクションが新しくできたり、イベントが大幅にリニューアルされたりと、客を飽きさせないよう、たゆまなく進化しています。

 

森岡さんが居なくても、停滞することなく、新しい変革が続く、これも森岡さんが種をまいていかれた結果なんだと私は思います。

 

実は、森岡さんがUSJを退任されてから、私は次はどこの会社の再生に行くのだろうと、大変気になっていた一人だったのです。

 

退任後は、ネット上でもしばらく情報がなかったように思います。

 

入念な準備をされていたのだと推察します。

 

すると、マーケティングノウハウを提供する刀という会社を起業されたのです。

 

日本は良いコンテンツがあるのに、マーケティングが弱いため、非常に損をしているところがある。

 

一言でいうと、もったいない。


日本の産業にきちんとしたマーケティングが根付けば、日本はもっと元気になるはず、こんな思いから新会社を立ち上げられたのです。

 

マーケティングというと、なんか数字や膨大な情報を分析して、高度な技術や知識が必要な気がするのですが、森岡さんはここでも、シンプルな3つのポイントを提示されます。

 

・あなたの会社は今いる市場がどういったものか理解しているか

 

・あなたの会社の消費者を理解しているか

 

・あなたの会社の強みを理解しているか

 

まさにこれは、私たちが人生100年時代を生きていくために、自分自身への問い掛けるような内容でもあるのではないかと思うのです。

 

・自分は何屋さんなのか

 

・自分を応援してくれる人はどのような人なのか

 

・自分の武器は何なのか

 

以前、日経トレンディというビジネス雑誌でお笑い芸人キングコングの西野亮廣氏との対談の様子が記事にあったのですが、そこで森岡さんが言われていた2つの言葉が凄く心に残っています。

 

「結局、個人も企業も向いていないことをやるのが一番よくない、自分の強みが世の中にとってどんな前向きな意味があるかを考えよ。」

 

 

「人の評価というものは、置かれた場所によって決まる。」

 

これは言い換えれば、人の強みも弱みも、業種や職種や勤務先などが変われば、逆になる可能性があるということ。

 

人には向き、不向きがある。

 

今そこでは、必死にがんばっていても成果は出ていないが、場所が変われば正反対の結果が出ることもある。

 

この前向きな言葉に勇気をもらった感じがしたのです。

 

また、森岡さんは、多くの経営者は「今、売れるものは何か」ばかりを必死に考えると言います。

 

それよりも、その商品の前提となる市場の構造や本質的な消費者の心理を把握することが、大事というのです。

 

また、現在の日本の小売業はAからZまで全部取り扱うというアマゾンに席巻されています。

 

今、ネットで簡単にいろんな商品が手に入る時代です。

 

ここでも森岡さんは、持論を展開されます。

 

消費者にとって、お店に行ってレジに並んで家まで商品を持って帰るということが面倒な作業でしかないなら、みんな楽なアマゾンを選んでしまう。

 

これは買い物は面倒であるという前提があるから。

 

そうではなく、こだわらないものはアマゾンで、大事なもの、大切なものは、アマゾンで済ますともったいない、と思わせるものを提供できるかがカギ。

 

つまり、買い物という体験自体に価値を付けられるか、ショッピング自体の価値を再定義する必要があるのだと。

 

私は「経験賛歌」ですので、モノ消費よりもコト消費を重視するというポリシーです。

 

しかし、森岡さんは、その買い物という行為自体をコト化するべきと言われます。

 

なるほど、これは面白い。

 

最近の著書で「マーケティングとは組織革命である」という本があるように、森岡さんは組織を非常に重視されます。

 

刀のスタンスは、外部コンサルではなく、組織の中に入り込み、長期にわたって、一緒に改革をするスタイルなんだと言われます。

 

従って、「社内が混乱しているので、改革は中止しましょう。」なんて声も各方面から出てくる可能性もある。

 

つまりこれは、個人間、部署間でハレーションが起こり、森岡さんも当事者として巻き込まれることを意味するのです。

 

それをわかっていてもなお、森岡さんはこの面倒くさいスタイルを貫くことが、真の組織改革、ひいては日本をマーケティングで元気することにつながるのだと言います。

 

どこかの企業で役員で入って高額な報酬を貰ったり、各方面から依頼される講演をすることなどで、十分贅沢な生活を送ることもできると言います。

 

しかし、そういう人生に私は価値を感じない。

 

大きなお金がなくても、贅沢をしなければ家族と平和に暮らしていける。

 

であれば、勝ったり、負けたり、泥にまみれて悪戦苦闘したりする人生の方が自分にとっては魅力的なんだと。

 

こうして、文章を書いていると、私が森岡さんの動向を気になる訳が少しわかったような気がします。

 

自然といつの間にか彼の生き方にもの凄く惹かれてしまっていたんですね。