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第19号 何十年もの時を超えて、記憶に刻まれているものとは

 

ついこの間の週末に、私にとって大きなインパクトのある出来事がありました。

 

それを説明する前に、私の過去の話をさせてください。

 

私が小学生低学位年の頃、夏休み期間中の夜に、学校が主催で、あるアニメ映画を上映したのでした。

 

屋外の校庭の端で、大きめのスクリーンが用意され、数十人の近隣の住人がそれを見るだけのものでした。

 

それは本当に何十年も前のことで、今となっては、「ジャック豆の木」というタイトルのアニメということ、お姫様のために主人公がキスをして助けること、最期に木を切って大男を倒すということだけが、記憶に残っていたのです。

 

つい先日、トムクルーズのミッション・インポッシブルを見に行ったように、もともと映画は好きなほうでしたので、テレビ以外で見た初めての映画のことは、何故か、ず~っと、記憶に残っていたのです。

 

そしていつもの週末を迎え、ネットサーフィンをしていると、ニコニコ動画にたまたまその映画らしきアニメがアップされているではありませんか。

 

冒頭を少しだけ見てそれだと確信し、後は食い入るように見始めました。

 

あまりにも昔のこととはいえ、なんと自分の記憶がいいかげんで、情けなくなるくらい曖昧なものであったかを知ることになりました。

 

まず、この素晴らしいミュージカルの部分が完全に欠落しているということ。

 

小学生低学年でミュージカルの良さを知ることが、そもそも無理な話かもしれませんが。

 

でも、これが今見ても古臭さを感じさせず、新鮮なんです。

 

そして、恐怖の表現が見事なんです。

 

悪役のしぐさや声の不気味さ。

 

私が当時一番気になっていたお姫様はなんとおもいっきりショートヘア。


お姫様は、長い髪であるものという勝手な私の思い込み。

 

それで、話し方がとても艶っぽい。

 

あれ~、そうだったっけ

 

もう自分の思い描いていたことと全く違ってきている。

 

これは、どうも気になって前に進めないと思い、再生を休止してから、ネット検索をしてこの映画の解説ページを見つけました。

 

マニア待望のDVD化!知る人ぞ知る’70年代ミュージカル・アニメ「ジャックと豆の木」って?

 

ここで驚きの情報がいくつも出てきたのです。

 

監督:杉井ギザブロー

 

音楽構成:阿久悠

 

主人公ジャックの声:市村正親

 

お姫さま:山本リンダ

 

魔女:樹木希林

 

もちろん当時は誰であっても、ふ~んと思ったのでしょうが、このキャストは凄いと思いませんか。

 

なるほど、これでこんなに盛り上がるんだと妙に納得して見続けました。

 

一番のクライマックスである魔女に操られたお姫様を救う場面がやってきました。

 

勇敢な男がお姫様にキスをすることで、魔女の魔法が解けるというストーリーになっています。

 

でも、あっさりとキスをして魔法が解けてしまいます。

 

そして最後の天空の城から、大きな豆の木を降りて追いかけてくる大男を、ツタを切って落としてしまうシーン。

 

そしてエンディング、個性的なキャラクターがいて、ハラハラして、面白かったのですが、どうも腑に落ちないのです。

 

何故自分は、小さいころに見たこの映画だけ、ず~っと記憶にあったのかということを。

 

何か意味があるのではないかと思ったのです。

 

ひょっとしてキスに憧れていたとか!?

 

違う違う(笑)

 

そういえば、魔法を解く方法を、人の声を出せる竪琴が主人公に教えるシーンがありました。

 

「勇気のある男がお姫様の口にキスをしたら、魔法は解け、正気に返るのさ」

 

「おいらにできるかなぁ」

 

でも助けるために、勇気を出して主人公は行動するのです。

 

多分、その時に、未知のものに対する、恐れ、または憧れみたいなものが、自分に芽生えたのではないか。

 

この時、自分は主人公に、精一杯、「ガンバレ、ガンバレ」と応援していたように思います。

 

そして一番最後の大男をやっつけるシーンです。

 

大きなツタを切る時、主人公は躊躇します。

 

これを切れば、せっかく元に戻ったお姫様と二度と会えない。

 

悩んだ末に、切り倒し、大男も落ちて死にます。

 

もともと、小さい時から集中力のない自分が、この映画を見ている時だけは、集中していたと思うのです。

 

ストーリー、音楽、演出といったものには目もくれずに。

 

それは、主人公が自分であったらどう行動するのか、常に考えていたような気がするのです。

 

まさに、自分事に置き換えていたとも言えるかもしれません。

 

「私ならどうする」


「まだ知らない世界に飛び込んで行く勇気が、はたして自分にあるのだろうか。」

 

人生において、いろんな人との関わりの中で、あらゆる場面で、この問いを持ち続けることが、自分らしい生き方ができるのではないか。

 

この懐かしいアニメ映画を見て、実は、自分の前向きな部分も昔からあるんだ、と認識できたことが一番の収穫であったように思います。