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第8号 相手に贈るエールは自分へのエールでもある

 

前号の続きとなります。

 

転職セミナーのブースアドバイザーとして、相談希望者に対するアドバイスをしていたお話です。

 

そのブースには私を含め最大25人程度のキャリアコンサルタントの方がいらっしゃいました。

 

やはりというか、それぞれ進め方やスタイルは随分違うようです。

 

私は、初めに仕事に対するその人のこだわりや、仕事に何を求めるのか、何故今の仕事についたのか、こうしたことを確認した上で、ブースの紹介、マッチングに移ります。

 

このため、どうしても時間がかかってしまいます。

 

中には、そんな話はどうでもいいので、自分の希望する条件に近い会社、早く紹介してよ、という感じの方もおられます。

 

そんな中、その日一番印象的な相談者の応対をすることになりました。

 

その方はハッキリと、「転職フェアに来たが、このブースの出展企業に行くつもりはありません。」

 

「私の将来についてキャリアコンサルタントとしてのアドバイスいただきに参りました。」

 

と言われたのです。

 

そもそもここでは、趣旨が違うと思いました。

 

しかし、この人は助けを求めてここに足を運ばれたんだ、と思い直し、じっくり話を聞くことにしました。

 

聞くと、新卒から金融機関に長年お勤めされてたんですが、ここ数年間は閑職となり、このままこの会社に残ると、自分はどんどんダメになる、と訴えられます。

 

そこで、一念発起して、社労士試験を数回受験され、何とか合格に。

 

しかしながら、実務経験がないので、持っているだけでは、役職定年前の社員を採用してくれる企業はない。

 

これから、私はどうしたらよいでしょうかというものでした。

 

ご自身も、資格を保有しているだけでは、転職するにしても、起業するにしても、なかなか厳しいと感じられておられた様子です。

 

いろいろ、話し込みましたが、結局のところ、資格を持っている自分は、こんなことが出来る、あんなことも出来ると、いろんな所に情報発信する必要があるのではないか。

 

そのためには、セミナーや勉強会などに積極的に参加して、いろんなことを吸収して、専門家として周りから認められ、また頼られるだけの知識を持つ。

 

それを、ボランティアでも業務委託でもいいので、経験値を積み、その知見をいろんなところで活かす。

 

そうした繰り返しが、成功につながるのではないか。

 

人生の先輩に、そんなえらそうな事を言った後、ふと感じたことが、これは、ひょっとして、相談者に言っているようで、実は自分に向かって言っていたのではないか。

 

人の相談にのることは、自分の経験や知識を活用して、その人のために尽くすと同時に、時には自分へのエールにもなる、そう実感したのです。